オジサンのよたよた話し


ゴールデントライアングルの喫茶店

こんな話しも、もう今は遠い昔。

中国大陸から蒋介石が共産党に追われて台湾に逃げた時、一部の反共軍は、インドシナ半島に逃げた。反共軍は、タイの北部から、ビルマ、ラオスにかけてのジャングル地帯に潜伏して、反攻の機会を狙っていた。しかし、軍隊を維持するには資金が必要である。この一帯は、阿片の原料となる芥子の産地であった。かくて、資金力が豊富な強力な軍隊が支配する闇の国が生まれた。ここを、ゴールデントライアングルと呼んだ(今でも呼ぶのかな)。
ゴールデントライアングルに足を踏み入れて帰って来た者は居ないとも言われた。世界最大の阿片王でもあるボスの首には、アメリカ政府によって巨額の懸賞金がかけられた。突如ジャングルの中にあらわれる中国語を話す軍隊を取材するために、多くの記者が入り込もうとした。

若者達にとって、こんなワクワクする話しはない。地図には載っていない国。中国語を話す軍隊が、ジャングルの奥で阿片の産地を守る。世界の麻薬は、その大半がゴールデントライアングルで作られると言われながら、誰も、その実態を知らない。ゴールデントライアングルの話しを聞くたびに、いつか行ってみようと心に決めていた。

ある仕事が終わってバンコックに着いた時、疲れのたっていた私は、完全に日本のいやらしいオヤジ思考になっていた。そして、タイでも美人が多いと言われる町チェンマイへ向かっていた。
可愛い女の子をインド人と張り合って負けた上に、気づいたら、レストランの隣の席だった。そんな時、ゴールデントライアングルを見たくなって(お姉ちゃんで負けたからとも言う)、さらに北へ向かった。
(チャンマイの最近の事件では、反共運動に積極的だった有名な女性歌手を思い出してしまう。もっと長生きして欲しかった。)

誰も近づけないと言われたゴールデントライアングルには、小さなゲイトが作ってあった。そこから写真を撮ると、遠くまでジャングルが広がっている風景となる。如何にも、それっぽい風景というわけだ。
しかし、反対側を見ると、そこには喫茶店が並んでいた。阿片パイプから、芥子のTシャツ。お土産は、何でもありだ。
当時は、そんなものだったが、今では川沿いに大きなリゾートホテルが立ち並んでいるそうだ。アジアの経済成長は、かっての秘境も飲み込んで行く。

ゴールデントライアングルから西に下ると、タイとビルマの国境に沿って、地図には載っていない国がある(あった?)のを御存知だろうか。国の名前はカレン。政府も軍隊も、学校も持っている国であった。独立宣言をしても、どの国も認知しないから、ゲリラと呼ばれていた。最近、聞かなくなったけど、どうなったのかな。マレーシアでも、経済成長が急激に進み始めた頃、最後のゲリラが投降した。御飯がちゃんと食べられて、豊かになれば、争いはなくなるというわけだろう。

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